4年越しの…
Written by まろ
 俺の中にはもう一人の自分がいる。
いつも自分の判断に対して「本当にそうか?」と問いただし別の角度からの意見を
与えてくれる。いつからかわからないが、確かに存在するやつは、俺の中にいる
第三者であり、ある事象に客観的に判断を下すための良き相談相手だ。

高校生だったとき、「バイクなんて絶対乗らないね。あんな危ないもの。」
と思っていた俺は大学に入って二輪免許を取り毎日のようにバイクで大学へ、
バイトへ、たまにはツーリングへと走り回っていた。雨だろうが雪だろうが。
やつが言ったのだ。「乗ってみなきゃ良さなんてわかんねーだろ?」と。
そして天気の良い日には、「こんな天気のいい日に車に乗ってるなんて。
バイクに乗れないなんて、不幸だね。」なんて思った。
とんだお調子もんである。

そのころは「外車?そんなもん絶対乗らないよ。高いし壊れるし。
アメ車なんて最低だね。性能悪いのに図体でかいは、燃費悪いは
いいとこないだろ?」と思っていた。

友人の家で外車雑誌を見ていた。友人は「BMW850CSiがいいなぁ。」
なんてことを言っていた。そのときコルベットが目がとまった。
「1250万?たっけー!」…運悪く俺が目にしたのはZR−1だったのだ。
その記事は外車に対するイメージをより強固にしただけだった。
そのときは。

大学4年になって車の免許を取った。「車を探さないと…」と思っていたとき
バイト先でスポーツ新聞の中古車の広告に目がとまった。
「コルベットZR−1…570万?」ちょっと待て、なんて値落ちだ。
「だろ?考え直せよ。」もう一人の俺が囁く。
「外車か…いいかもしれないな。」と思い始めたおれは、
外車の中古車のバイヤーズガイドをあさり始めた。

しかし金があるはずもなく、最初は近所の人にもらったワンダーシビック
そのあとEP71スターレットと乗り継いだ。どっちもいい車だった。
しかし、中途半端な古さの国産車の悪いところが気になる。
本人がどれほど気に入っていてもまわりには「貧乏くさく」見えるのだ。
これが外車ならちょっと古くても「好きなんだなぁ。」と思われるくらいである。
そのころ次の車は決まりつつあった。

おれが求めたのは以下の項目である。
1.速い…国産各社のフラッグシップモデルに劣らぬ速さ。
2.人気車…不人気車はパーツが出ないからね。
3.あんまりそのへんに走ってない…どんな車に乗るかも個性でしょ?
4.安い…金ないし。現実は厳しいよ。
5.カッコイイ…人がなんと言おうが俺にとってかっこいい車じゃなきゃね。
6・インパクト強い…人に話してもびっくりしてくれそうなやつがいい。
7.長く乗れそう…モデルチェンジがあんまり気にならないようなクルマ。

2と3なんて明らかに矛盾するはずだが俺は答えを出した。
「カマロだな。」だってかっこいいんだもん。
 

当然のように、まわりは反対or忠告を始めた。
「アメ車だろ?壊れるよ。」…あんたのシルビアだってバックギア壊れたろ?
                   あいつのシビックもイグナイターいかれてぱったり止まったし。
「燃費悪いぜ。」…GT−Rやセブンよりましさ。
「不便だよ。」…便利な車を便利に使うのはあたりまえ。不便な車を便利に使おうとするから
          人間が成長するんだろ。
「雪降ったらカメになっちゃうぞ。」…会社の往復に歌う曲数が増えるだけだよ。
「電装系弱いって。」…何遍もバッテリーあげてるお前に言われたかないよ。
「税金高いんだろ?」…たしかに。
一番多いのは「壊れる。」と言う話だ。でも、もう好きになったもんはしょうがない。
だれだって、恋人がよく風邪ひいたり怪我するからって、嫌いにならないだろ?
車もバイクも女も子供も、手間がかかるほうがかわいいのさ。

後日談だが、みんな買ったあと「いっぺん乗せてくれよ」と言った。

4年待った。資金もたまった。相場も底値と言っていい状況だ。
クルマ選びも充分楽しんだ。
EP71もオイル漏れするようになってきたし、パワーウインドーも壊れてしまった。
もう潮時だろう。
うまい具合に車は見つかってくれた。色、グレード、程度に不満はない。
パーフェクトだった。緩みきった顔でハンコを押した。

晴れて納車になった。恐かった、運転が。
「こいつに…何年乗らなきゃいけないんだろ?」なんて思った。
しばらくして運転にも慣れたころ、オイルが漏れはじめ、ウインドーは上がらなくなった…
俺はおかしくて笑った。もう一人の俺も笑っていた。
カマロは苦笑いしている…
 

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